今回は6年ぶりに再読した「神様のカルテ」を紹介します。
「神様のカルテ」は凄腕医師がいるわけでも(十分凄い医師なのだが…)、現実からかけ離れた奇跡が起きるわけでもないリアリティが高いと思う作品です。しかし、リアリティが高いからこそ感動して、作品に引き込まれると思うので、ぜひ読んでいただきたいです。
作品および著者の概要
「神様のカルテ」は夏川草介さんにより執筆された作品です。
「神様のカルテ」のあらすじ
神の手を持つ医者はいなくても、この病院では奇蹟が起きる。
栗原一止(いちと)は信州にある「24時間、365日対応」の病院で働く、29歳の内科医。ここでは常に医師が不足している。専門ではない分野の診療をするのも日常茶飯事なら、睡眠を3日取れないことも日常茶飯事だ。妻・ハルに献身的に支えられ、経験豊富な看護師と、変わり者だが優秀な外科医の友人と助け合いながら、日々の診療をなんとかこなしている。
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そんな一止に、母校の医局から誘いの声がかかる。大学に戻れば、休みも増え愛する妻と過ごす時間が増える。最先端の医療を学ぶこともできる。だが、大学病院や大病院に「手遅れ」と見放された患者たちと、精一杯向き合う医者がいてもいいのではないか。悩む一止の背中を押してくれたのは、死を目前に控えた高齢の癌患者・安曇さんからの思いがけない贈り物だった…。
著者:夏川草介
1978年大阪府生まれ。信州大学医学部卒。長野県の病院にて地域医療に従事。2009年、本作で第十回小学館文庫小説賞を受賞しデビュー、10年本屋大賞第二位(当時)
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「神様のカルテ」を読むきっかけ
「神様のカルテ」は約10年前に嵐の櫻井翔さん主演で映画化されたのがきっかけで知り、原書を読みました。(きっかけの映画は見たことありません)
当時の私は大学受験を控えた高校生(浪人生だったかも…)でした。受験生のとき、私は医師になりたくて、医学部医学科への進学を目指していました。(夢は叶いませんでしたが…)
医師に興味があり、映画化されたのがきっかけで「神様のカルテ」を読んだのですが、そのリアリティに驚愕して、医師になるのが怖くなりました…(今となってはなれなかったので関係ないですが…)
「24時間、365日対応」病院で働く栗原一止医師
主人公 栗原一止は地方病院で働く医師であり、36時間連続勤務が当たり前という衝撃的な内容の導入で本書は始まります。
しかも、医師歴1桁年である主人公が1番のベテランであり、後の2人が研修医という圧倒的な医師不足の中深夜の緊急外来を回さなければならないという過酷の現場です。
この状況が地方の病院では当たり前という書き出しに、衝撃的すぎて本書にのめり込んでしまいました。
もちろん、医師を目指していたので、このような状況であるということは知ってはいました。しかし、小説であるとはいえ医師である夏川草介さんが当たり前というとリアリティがあり、当時の私はビビりましたし、ブラック研究室を経た今ではかなりヤバいなと感じました。現在、救急で働いている方々には感謝の思いしかありません。さらに、コロナウイルスの猛威の中本当にお疲れ様です。
私はこの程度の環境(大学(院)生の世間の認識とは違う研究室での過ごし方とは?)でブラックと嘆いているので、全く現場の医師たちには全くかないません…本当に尊敬いたします。
末期がんの患者とどう向き合うか葛藤する栗原一止医師
36時間連続勤務という劣悪な環境の中で、人が亡くなるのが当たり前という要素が加わります。
医師といえど救うことのできない患者さんはたくさんいます。医師は神様ではありませんからね…
しかし、救えない患者さんにとって意義のある時間を過ごせるようにサポートすることも医師の仕事であると栗原一止医師は潜在的に思っています。(本書最後の方で私は寄り添える医師になりたいと気づきますが、それまではどういう医師になりたいか悩んでいました。)
このシーンに医師の仕事が非常に辛いことを示されているといえます。治療をするだけでもきついお仕事にもかかわらず、もうじき亡くなる患者のメンタルケア(終末期医療)までしなければならないのは過酷であると私は考えます。
忙しい中で、患者さんのことをよく知り、医師として何ができるのかを24時間365日考えなければならない医師はとてもつらい仕事だと思います。
本書では、末期がんの患者である安曇さんが「最も辛いことは孤独であることです。先生はその孤独を私から取り除いてくださいました。たとえ病気は治らなくても、生きていることが楽しいと思えることがたくさんあるのだと、教えてくださいました」と遺書に残しています。このシーンが感動的すぎて泣けました。
このような、遺書を残したくなる栗原一止医師の行動がこの作品の見所かなと思います!!
主人公の細君(妻)として支える栗原榛名さん
身体的にも精神的にもきつい栗原一止医師を支えるのが細君(妻)である栗原榛名さんです。彼女も世界の山を駆け巡る凄腕のカメラマンです。
口数は多くはないですが、夫の変化にすぐに気づきメンタルケアをする栗原榛名さんはすばらしいです。
私もこのような女性を細君にしたいと思いました。栗原一止医師が榛名さんを細君にできたことが本書唯一の奇跡だと私は思えます。(笑)
医師になれなくてよかったかも
私は本書を読んだ後も医師になろうと人生で2回センター試験に挑みましたが、敗北しました。
センター試験も乗り越えられないような愚か者が本書で描かれる医師という仕事をこなせるわけがないので、なれなくてよかったと今になって思えます。
36時間以上連続勤務なんていくらもらっても私は耐えられません。
医師を目指している方、終末期医療について知りたい方、「神様のカルテ」を読んでみるとあなた考えが深まると思うので、一読してみることをおすすめしますよ!!
「神様のカルテ」の舞台を巡り歩いたブログを見つけました。コロナがおさまったら行きたいですね!!
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